Mission.02
水蓮がやってきたのは豊田市にある“松平郷”。 松平郷は、徳川家康公のルーツ、松平氏のはじまりの地。 松平氏発祥の地として知られる松平郷。ハッチョウトンボの生息する自然豊かな山里であり、松平氏の旧居館「松平東照宮」や菩提寺「高月院」など、松平家と徳川家ゆかりの場所も数多く存在。 「ここは美しい山里だが、…郷内を囲うように厳かな空気が漂っておるな」今回も半蔵様の指令を受け、、水蓮が駆け巡ります。
松平郷にて戦勝祈願となる家康様ゆかりの品を持ち運べ
松平東照宮・松平郷豊田市
◆◆PROLOGUE◆◆
これまた月夜の美しい晩。「このような夜は、なにやらありそうだが…」
月を見上げる水蓮。…とそこへ。シューッ、スタッ!
「やや!」
水蓮の横っ面を通過した手裏剣の先には、指令の紙がたなびいている。
『出陣が迫っている。三河国へ行き、戦勝祈願となる家康様ゆかりの品を持ち運べ』
いよいよ出番かとニヤリとする水蓮だが、
「しかし…この指令どうにかならんもんかのう。命がいくつあっても足りぬわ…」
◆美しき松平郷にぴんと張りつめた空気が
水蓮がやってきたのは豊田市にある“松平郷”。
「ここは美しい山里だが、…郷内を囲うように厳かな空気が漂っておるな」
早くも水蓮、何やら感じ取った模様。忍者だけに気配には敏感です。
そのまま松平東照宮へ入ろうとしたものの、楓の木と井戸跡の前でふと足を止めます。そう、ここは、松平氏のはじまりとなったロマンスの場所。
「なにっ、ろまんす、とな!」
この楓に傘をかけて、あやめの花に見とれていた僧・徳阿弥。地元の武士の娘・水姫が一輪のあやめの花を添えて水を差し出したことがきっかけで、ふたりは結ばれ、還俗して松平親氏と名乗った…というのが松平家のはじまりです。
「源氏物語ばりの手口であるよのう。それはともかく、ご利益を~ご利益を~」
…今回も必死の水蓮です。
◆家康公と始祖・親氏公をまつる松平東照宮
「しかし、ここは神社であるのに何故か石垣や堀があるのじゃな」
徳川家康公と始祖・松平親氏公が祀られている松平東照宮は、もともと松平家の屋敷があった場所。屋敷内に八幡宮を祀ったことが神社の起源となっているため、このように珍しい姿が見られるのです。
東照宮に足を踏み入れると
「…!!」
水蓮の顔がこわばります。
上を見ると天井画がいちめんに。これは徳川家康公400年祭記念大会のメモリアル事業で実現したもので、豊田市在住の漆芸家 安藤則義氏の手により、豊田の四季折々の草花が105種類描かれています。
「上を見ずにはいられない迫力じゃ!天井の四隅には東照宮ゆかりの“双葉葵”もあるぞ。実にあっぱれじゃな」
美しい天井に心癒された水蓮、お次は境内に「産湯の井戸」なるものを発見。
「松平家では代々この井戸の水を産湯に用いたとか。家康公が岡崎城にて生誕の折にも、この水を竹筒に入れ早馬で届けたと言われておる。これは戦勝祈願としてふさわしかろう」
これぞ手柄だとほくそ笑む水蓮だが
「ううむ…これでは汲めぬ…」
とがっくり。
どうしたものかと途方に暮れていると社務所に「力水」の文字が!
「これじゃ、これじゃ!この水、どうか譲ってくれぬかの」
この水を風呂に入れると不老長寿や安産にご利益があると聞き
「も、もう1本買っていこうかの…」
つくづくご利益に弱い水蓮であります。
◆天下人気分で腹ごしらえ「天下茶屋」
戦利品を手に入れたので「天下茶屋」へ腹ごしらえに。「麦飯とろろ定食」と名物「天下もち」を食べ、すっかり天下人気どりです。
「それにしても家康様は、なぜ松平ではなく、徳川という姓をあえて使われたのじゃろうか」
家康公が姓を松平から徳川へと変えたのは、三河守就任のための苦肉の策と言われています。就任の条件に合うようあらゆるこじつけで源氏筋の徳川となって以来、家康公の直系のみ徳川を名乗らせました。その一方で、有力大名には「松平」姓を与え、親戚のように信頼していると恩を売るなど、「松平」姓は政治的にも利用されたのです。
「徳川となったからこそ運命を飛び越えたのだ。これぞ天下人の所業であることよ」
◆将軍家より手厚い保護を受けた「高月院」
満腹のおなかをさすりつつ、高月院へ。松平親氏公が、本尊である阿弥陀仏やお堂などを寄進し、寂静寺から高月院と改称したとされています。現在の山門や本堂は、徳川家光公によって建立されたものです。
「高月院の住職は将軍の命で選ばれ、十万石待遇により東海道を籠で往復したという。高月院は、将軍家先祖の菩提所として別格の扱いであったことがようわかるな」
本堂の左手奥に松平氏祖先の墓所がありました。一段と高い石垣上にあるのは葵の紋の刻まれた扉…中央が松平氏の始祖親氏の墓塔です。
「しかし…家康様はなぜ神様となられたのか。そこにどういう意味があるのだろうか…」
水蓮が不思議に思っているのは、なぜ自らを「権現」という神に仕立てたのかということ。
「仏が姿を変え現世に現れたのが家康様と…。戦乱の世を統治するには神という圧倒的な存在、力が必要であったのであろう」
ふうっとため息をついた水蓮、
「とほうもないお考えじゃ。ただ…これはまことの話じゃ。それが証拠に平和な世の中になっておるからのう…」
歩いていくと「天下池(龍池)」から何か呼ばれたように感じた水蓮。
「ん…何であろうここは」
ここは、水不足による飢饉だったときに、弱っていた小蛇を助けて池に放ったところ、龍になって雨を降らせてくれたという伝説がある池。見上げると、彫りの深い立派な顔だちの親氏公の像が、おだやかに水蓮を見つめておりました。
家康様の力水、そして半蔵様へのみやげの天下もちを抱え、城へと急ぐ水蓮。その足取りは軽やかでありました。
Spot Overview
松平氏発祥の地として知られる松平郷。炮烙山や六所山にほど近く、巴川が流れるなだらかな丘陵地に位置していて、ハッチョウトンボの生息する自然豊かな山里であり、松平氏の旧居館「松平東照宮」や菩提寺「高月院」など、松平家と徳川家ゆかりの場所も数多く存在しています。
「松平郷園地」では、春はサクラ、初夏にはハナショウブやアジサイの花々、秋にはハギの花や紅葉など、四季を通じてさまざまな自然の風景に恵まれています。また、松平八代を象徴する「石柱」や「親氏像」、室町時代を連想させる「室町塀」や「冠木門(かぶきもん)」、武家屋敷風の休憩所「天下茶屋」などもあり、歴史の風情を堪能しながら散策も楽しめます。