Column.02
奥三河の秘境へ行く注目バスツアー
バスツアーで、愛知のディープな旅を楽しんでみようということで、申し込んだ、豊橋鉄道の奥三河再発見ツアー。参加したコースは「伝統の灯!“清水のチョウチン祭り”と日本の原風景めぐり」。 日本の棚田百選のひとつ・四谷千枚田から“奥三河の名瀑”と呼ばれる鳴沢の滝へ行き、地元の恵みがいっぱいの夕食、締めは、清水のチョウチン祭りへ。
奥三河再発見【豊橋鉄道株式会社】
「伝統の灯!“清水のチョウチン祭り”と日本の原風景めぐり」
実は、ひとりで参加するのははじめて
「面白いバスツアーがある」と聞いて申し込んだ、豊橋鉄道の奥三河再発見ツアー。参加したのは、「伝統の灯!“清水のチョウチン祭り”と日本の原風景めぐり」という日帰りコースです。
この日は、日本の棚田百選のひとつ・四谷千枚田から“奥三河の名瀑”と呼ばれる鳴沢の滝へ行き、みのや旅館で夕食、清水のチョウチン祭りを見学…という流れ。バスツアーというと、誰もが知ってる有名観光地を効率よく安価に回ってくれるイメージがあったので、ほとんど知らない場所を巡るこの旅は、一見、地味めのラインナップにも思えます。
集合場所ではすでにほとんどの人が乗車していて、すでに思い思いの過ごし方を満喫。バスツアー上級者と思われる夫婦は、座席に自作のフックを取り付けてスタンバイOK。ひとりで参加の男性は、ビールとつまみで早くもリラックス…。意外にも、ひとりで参加する方が多くて安心しました。
バス内では、企画を担当した豊鉄の若きホープ・中田さんが同行。「この人、私たち中高年のアイドルなのよ!」と女性参加者たち。アイドル…というよりは息子のように思えましたが…。参加者はどうやらリピーターが多いようで、「中田さんが薦めるなら」と申し込む人も多いよう。事前に調べ過ぎず(頭の中に描きすぎず)、フラットな状態で旅にのぞむ…こういう旅ができるのも、奥三河ツアーの面白みかもしれませんね。
日本の原風景が残る美しき「四谷千枚田」
そうこうしている間に「四谷千枚田」に到着。奥にそびえるは標高883mの鞍掛山、とそこから棚田が段々と広がっています。参加者は思い思いに棚田周辺を散策。ある女性客が田んぼの中を見て「あらぁ~カワイイおたまじゃくしの群れ!」と声をあげたので「どれどれ」と近づくと…突然えも言われぬ衝撃が!「うぐぁっ!」…シカも恐れる電気柵に自らかかるという大失態!皆さまはくれぐれもお気をつけあそばすよう。
それにしても、ガイドブックには四谷千枚田のすばらしい絶景がいくつも載っていて、それがすべてのように思えますが、実際に行くと、棚田はもっと小さな草花や生き物たちの宝庫だということに気付かされます。田んぼに入って走り回った子どもの頃の思い出がよみがえり、30年前にタイムスリップしたような不思議な感覚。参加者も童心に返って、生き物や草花探しに夢中に。お互いの会話も弾み、心なしかみんなゆったりとした顔つきになったような気がしました。
マイナスイオンが全身に降り注ぐ「鳴沢の滝」
さてお次は作手地区の最北端にある「鳴沢の滝」へ。落差15mで、もともと水量の多い滝ということですが、前日の雨でさらに大量の水が勢いよく岩を打ち付けダイナミック!霧に見えるほど大量のミストが降り注ぎ、なんとも気持ちいい時を過ごすことができました。「すごいマイナスイオンだね~」「水が冷たくて気持ちいいわよ」気ままなひとり旅でも、素敵な体験をしたときは、お互い共感しあいたいもの。その点バスツアーは、いいとこ取りですね。
地元食材尽くしの絶品夕食「みのや旅館」
そして少し早い夕食ということで「みのや旅館」へ。やはり旅の楽しみは食事!お膳が並ぶと女性陣はにわかに色めきだちます。料理の内容は、天狗なすやおかのり、おかひじきなど、地元の珍しい食材を使ったもので、味も話題も大満足。女将さんに天狗なすを見せてもらうとその大きさに一同ビックリ!「天狗なす、クリーミーで美味しかったわねぇ」「満足したわぁ~」ごはんトークは飽きることなく、その後も続くのでありました。
守り続ける伝統の祭り「清水のチョウチン祭り」
いよいよメインイベント「清水のチョウチン祭り」の舞台・津島神社に到着。煩悩の数と同じ108段ある石段を上ると、「清水観音堂」があり、隣に「津島神社」がありました。現地ガイドの金田さんによると、廃仏毀釈を進めていた幕末から明治の時代、清水の人は、お上に従わず仏様と神様をそのまま残して合祀している(神仏習合)珍しい場所なんだそうです。
神社組と屋台組に分かれた男衆、まずは神社組が「神火」を公会堂(集会所)に集まっている屋台組に渡し、その種火で提灯に火をつけ、笹竹に結び付けていきます。近くまでのぞきに行くと、地元の方が「付けてみてごらん」と灯のついた提灯を渡してくれました。七夕の短冊のように提灯を笹にくくりつけると、いよいよ始まるんだな、と気持ちが盛り上がってきます。
笛に太鼓のお囃子に合わせてほおずき提灯がゆらゆらと…。事前にいろんな写真を見ましたが、やはり自分の心で感じる風景は、それらとは全く違います。大手旅行社なら、絶対に組み込まないと思われる、ささやかな地元の祭りですが、地元の方に交じって綱を持つ列にも入らせてもらい、気分はすっかり清水の住人。故郷になったみたいです。
「あんたはどっから来たの?」とおばあさんに聞かれ、名古屋から、と答えると「へえぇ~そんな遠くからわざわざ来たんかい」と驚かれました。「そうかね、名古屋かね…」何度もつぶやくおばあさんは何かうれしそう。豊鉄の中田さんは、このツアーについて「奥三河の良さを知ってほしい」と言っていたけれど、それと同様に、観光客を迎える側の奥三河の人たちにとっても、故郷の魅力を再発見できる役割を担っているのかもしれません。
打ち囃しの奉納が終わり、一瞬あたりは静寂に。そして突然、バキバキバキッ…!と山車から竹の折れる音が響きました。その動きで提灯の灯はほとんど消え、突然「いくぞー!」と男性が色とりどりのヤナギを参拝者に向けて投げていきます。これが祭りのハイライト“チョウチン獲り”。参拝者は右往左往して、ヤナギや提灯をゲット!のんびりが突然、興奮状態になったかと思うとアッという間に終了。「ア~よかった今年も無事にとれたわぁ~」と満足そうに帰路につく地元の人たちと、最後にお別れの挨拶を交わし、清水を後にしました。
旅とは、単純に観光地をまわることではない…ということを強く感じた今回のひとり旅。たまたま出会った素敵な旅人たち、この旅を楽しんでもらおうと企画してくれた中田さん、素朴で親切な愛すべき奥三河の人たち…人との出会いがなければ、旅はきっと味気ないものになることでしょう。袖振り合うも多生の縁、また行きたいと思わせる故郷のようなバスツアーの旅でありました。
豊橋鉄道 中田さん
この「奥三河再発見ツアー」は、僕自身が奥三河で出会った自然の美しさや人とのふれあい、素晴らしい祭りの魅力をみなさんにお届けできたら、という思いで企画しています。現地の方をガイドに招いて、地元ならではの面白い話をしてもらったり、一緒に体験をしたり、食事をしたりといったふれあいから、奥三河をもうひとつの故郷のように感じてくださるとうれしいなと思っています。
ツアーのパンフレットは新豊橋駅、名駅ウインクあいち1Fにある愛知県観光協会で手に入ります。また豊橋鉄道のサイトでも見ることができますので、ぜひ奥三河を体感してみてください!
参加者の声
「祭りが好きで、今回もチョウチン祭りが目当てで参加しました。以前、東栄町の花祭りのツアーに参加したんですが、現地の人からガイドブックにないような生の話が聞けて、すごく楽しくて。車の免許を持ってなくて自分では奥三河になかなか来られないので、このツアーはすごくありがたいんですよ」(岡崎から参加した女性)
「旅行が好きで、バスツアーに結構行ったこともありますが、有名な観光地はどこも似たような感じ。奥三河をまわるツアーは他にはないし、手作り感のあるツアーがいい」(名古屋から参加した女性)
「もともと1人で行ってみようと思ってネットで探していたんです。くねくねした峠道を通るのでマイカーで行くのも大変。公共交通機関も少ないうえに、泊まる場所もないので諦めようと思っていたところ、このツアーを見つけて参加することに。こんなマニアックなツアーがあるんだって感激しました」(長久手から参加した男性)