醸造蔵のまち・武豊さんぽ | 【公式】愛知県の観光サイトAichi Now

醸造蔵のまち・武豊を歩いてみたら。

Column.48

醸造蔵のまち・武豊さんぽ

武豊町は、知多半島の中央部にある小さなまちです。JR武豊線の開通や衣浦港(武豊港)の開港によって醸造業が飛躍的に発展し、「みそとたまりの町」と呼ばれるようになりました。現在でも当時の歴史が色濃く残っている地域があり、ぶらり歩きにはもってこい。武豊駅から歩いて行ける蔵町さんぽ、新しい発見をお楽しみあれ。

黒板塀の続くノスタルジックなまち

温暖な気候と良質な水に恵まれた知多半島には、半田や常滑など醸造業の盛んな町が多くあります。その中でも武豊町は、昔ながらの製法が今も受け継がれている味噌蔵のまち。味噌蔵といえば、全国にある多くの蔵がステンレスタンクを使い、3か月ほどの温醸速醸で作られているのに対して、ここ武豊では、昔ながらの杉樽を使って2~3年もの月日をかけて天然醸造を行っています。しかもそのような蔵が、この時代にもかかわらず、5軒もあるというから驚きです。
 

「中定商店」で武豊の醸造文化を学ぶ。

小迎地区にある味噌・たまり蔵「中定商店」では、実際に使われていた蔵を醸造に関する展示施設「醸造伝承館」として公開しています。ここでは、味噌やたまりを醸造するときに使っていた道具や様々な資料が展示され、まるで小さな歴史民俗博物館のよう。
この「醸造伝承館」を、六代目当主・中川安憲さんに案内していただきました。

  • 醸造伝承館
  • 六代目当主・中川安憲さん

豆味噌は、大豆を蒸しあげて味噌玉にした後、種麹をまぶし、味噌玉麹を作るところからはじまります。中定商店では、「醸造物の味や香りの要となるのは、麹作りである」と、代々その研究に心血を注いできました。実際の味噌玉を見せていただきましたが、岡崎で見た八丁味噌の味噌玉よりもずっと小さいものであり、そのわずかな違いからも、異なる味わいを生んでいるのがわかります。

  • 醸造伝承館
  • 醸造伝承館
  • 醸造伝承館

こうしてできた麹は、塩水を加えてもろみを作り、杉桶で3年熟成されます。様々な菌が棲みついた蔵や木桶を使うので、温度管理は非常に難しいものの、他にはない味わいが生まれます。とはいえ、それだけで美味しいものができるはずもありません。
冬場は仕込み、夏場は汲みかけと、職人が菌の働きをこまごまと手助けしながら、菌の育ちやすい環境を代々守り継いでいるからこそ、妥協のない美味しい味噌が生まれるのです。

味噌仕込み

そして、たまりも、豆味噌と同様の作り方をします。昔は味噌を作って、そこでできるたまりも同時に抽出し、販売していたそうですが、現在では別々に仕込んでいるそうです。

唯一違う点としては、底から上までつながっている筒を入れて、上がってきたたまりを表面にかける「くみかけ」。この作業を夏場は毎日、冬場は週に1回程度繰り返して、熟成の度合いを均一にしていきます。不思議なことに夏場には、天敵のカビから守るように、液が石より上まであがってくるのだとか。中川さんは、そういった瞬間に、菌はつくづく生き物だなと、より愛おしく感じるそうです。

くみかけ

この巨大な木桶は、大杉の八尺桶(高さ約2.4m)。これは、他の蔵で通常使われる六尺桶より約2.5倍も大きいサイズですが、中定商店では、20本も使われているそうです。

大杉の八尺桶

これだけの数を揃えている蔵は、全国的にみても珍しいといいます。
これらの立派な桶を見て思い出したのは、かつて、酒蔵を訪れた時に聞いた「今では桶やタガを作る職人さんがいない」という話。心配になって、こちらでは大丈夫ですか、と聞いてみたのですが、意外に問題ないとのこと。
そもそも江戸時代に栄えた知多の酒造業が廃業し、明治期にその蔵や杉桶、道具を再利用してはじまったのが、味噌やたまりの醸造業。これらは酒造りと違って桶が痛みにくく、何百年と長持ちするものだとか。

見学の後にこちらで何点か購入し、後日、家でもいただきましたが、味噌もたまりも、とてもまろやかで、のどの奥から鼻へとうまみ、香りが広がります。毎日の味噌汁がこんなにも豊かさをもたらすなんて!自然の力、そしてそれを活かす職人の力は、本当にすごいですね。
 

黒板塀伝いに醸造蔵の町並みを歩く。

さて、次は里中地区にある「醸造蔵の町並み」を散策してみることにしましょう。
国道247号線の「里中」交差点を西側に入れば、黒板塀の続く町並みが見えてきます。
映画のロケ地になりそうな、魅力的な細道が続いています。
通りにも、味噌・たまりの香りがふわり。ちらりとのぞいた蔵には、大きな杉樽がいくつも置かれ、静かな時を刻んでいました。

  • 醸造蔵の町並み
  • 醸造蔵の町並み
  • 醸造蔵の町並み
  • 醸造蔵の町並み
  • 醸造蔵の町並み

ここでは5軒のうち、「丸又商店」「カクトウ醸造」「伊藤商店」「南蔵商店」の蔵があり、蔵町独特の町並みを形成しています。武豊は、明治20~30年代の武豊港と鉄道の乗り入れによって、醸造業が盛んとなりましたが、明治期の興隆とその後を見るような風景があります。
 

まちの駅「味の蔵たけとよ」

まちの駅「味の蔵たけとよ」

散策で出会った各醸造蔵の味噌・たまりは、こちらで購入することができます。地元の野菜や果物、スイーツ、焼き立てパン等の販売のほか、武豊の味噌・たまりを使った料理が評判の食堂・軽食の店もありますよ。

  • まちの駅「味の蔵たけとよ」
  • まちの駅「味の蔵たけとよ」
  • まちの駅「味の蔵たけとよ」

 
グルメなら!武豊名物「たまりラーメン」はいかが?

武豊のご当地ラーメンといえば、醤油ではなく「たまり」を使ったラーメン。たまりは、5つある醤油の種類の中のひとつで、大豆100%で作られます。うまみたっぷりのたまりを使ったラーメンは、どれも間違いない美味さ!市内ラーメン店で、他では味わえない絶品たまりラーメンをぜひご賞味くださいね。

たまりラーメン

武豊の旅は、熟成の味わい。

昔ながらの町並みの中に、今の暮らしが溶け込んで、それがまたこの町の良さになっているのを感じました。
ここでは触れませんでしたが、武豊には「浦島太郎」のお話に登場するあの有名な場所も。
また、日が暮れたら、味の蔵たけとよから徒歩10分ほどにある衣浦港の工場夜景がおすすめです。意外とじっくり楽しめる武豊、まずは醸造蔵めぐりからいかがでしょうか。

  • 衣浦港の工場夜景
  • 衣浦港の工場夜景

フォトギャラリー

Spot Overview

醸造伝承館武豊町

豆みそ、たまりの蔵元である中定商店が、醸造の蔵を改装し、昔使っていた道具などと現在の醸造の様子を展示・公開しているのが醸造伝承館です。
館内には、先代が自社製品にこだわらずに集めたとされる、この地域のたまりや醤油のラベルが所狭しと貼られており、何とも懐かしい気持ちになります。
見学には事前予約が必要となり、工場見学と併せて試食も楽しむことができます。
なお、敷地内の3つの建物が国の登録有形文化財となっているので一度は訪れてみたいスポットです。

Spot Overview

まちの駅 味の蔵たけとよ武豊町

武豊町内の6つの蔵元が製造する味噌・たまりなどを購入できるのが、こちらのお店。そのほか、地元で獲れた野菜やくだものなども店頭に並びます。店内にはフードコートもあって、武豊町の味噌・たまりを使用したみたらし団子などをいただけます。
武豊町は、日本三大醸造郷に数えられる味噌蔵のまち。町内の大足・里中地区の小路に入って行くと、蔵の黒板塀が続く趣ある町並みが広がっています。まちあるきのあとは、「味の蔵たけとよ」で休憩&お買い物がおすすめです。

Spot Overview

武豊町地域交流センター・旧国鉄武豊港駅転車台武豊町

武豊町地域交流センターは、武豊の醸造文化などを学べる展示が充実しているので、ぜひ立ち寄りたいスポットです。この展示には、県内最初の鉄道である、現・JR武豊線がこの地域の産業に果たした役割がわかるジオラマやビデオもあり必見。なお、同センターの横には、貨物輸送が盛んだった頃に活躍した転車台(国の登録有形文化財)が保存されています。また、地元の味噌・たまり商品などが購入できる「味の蔵たけとよ」が隣接しているので、お買い物も出来てとても便利です。

Spot Overview

日本三大醸郷・武豊武豊町

温暖な気候と豊かな自然に恵まれた知多半島のほぼ中央に位置する武豊町では、味噌・たまりの醸造業が江戸中期に始まり、関東の銚子、関西の龍野と並ぶ「三大醸郷」のひとつに数えられています。最盛期には50軒もの醸造蔵があったとされていて、現在でも町内の大足・里中地区の小路に入って行くと、蔵の黒板塀が続く趣ある街町並みが広がっています。両地区に程近い地域交流センターでは、武豊の醸造文化などを学べる展示が充実しているので、是非お立ち寄りください。また、観光ガイドボランティアをお願いし、しっかりと学ぶのもおすすめです。

Spot Overview

蔵のまち並み武豊町

温暖な気候とミネラルを豊富に含む良質な硬水が湧き出る知多半島では、古くからこの天恵を活かした酒やたまり・豆味噌などの醸造が盛んな土地でした。戦争による経営難で、武豊のたまり・豆味噌蔵も激減しましたが、古来の杉桶を使い続け、先人から伝承された知識と技術・製法でたまり・豆味噌づくりを行う蔵元が今も5軒残っており、伝統の味を大切に守っています。伝統の味を守るため、蔵の中への見学は出来ませんが、小迎地区の醸造蔵「中定商店」では、実際に使われた蔵を改装して展示施設として公開している「伝承館」があり、味噌やたまりを醸造するときに使う用具や様々な資料を展示してあります。
※見学には事前申し込みが必要です。


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