Column.45
謎多き弥生時代の暮らしを体感する 「あいち朝日遺跡ミュージアム」突撃レポート!
弥生時代に栄えた東海地方最大級の集落遺跡が清須市にある「朝日遺跡」です。50年にも及ぶ調査研究によって、諸説を打ち破るような数々の新発見がここから生まれました。その研究の成果を一般にわかりやすく紹介しているのが、「あいち朝日遺跡ミュージアム」です。 そこで11/22にオープンをしたこの施設の楽しみ方をレポート。教科書に載っていた歴史とは少し違う、弥生時代の世界を体感してきました。
<おすすめのまわり方>
「あいち朝日遺跡ミュージアム」には館内施設と館外施設があります。館内には、基本展示室2つと企画展示室、キッズ考古ラボ、ワークショップ用の体験学習室や研修室があります。そして、館外では弥生時代の遺構や生活空間が復元されています。
見どころたっぷりの「あいち朝日遺跡ミュージアム」。歴史好きの方はもちろん、歴史は難しいな、と感じている方も楽しみたいですよね!そこで、学芸員さんを突撃!おすすめのまわり方を紹介していただきました。
まずは館内を「じっくり」見学してみましょう
館内の展示では、多くの出土品をたくさん展示するというよりは、出土品をかなり厳選し、その分シンプルに、わかりやすく見せているといった印象。要点を絞っているため、ゆったりとしたつくりになっていますが、実はこの中に最新研究が凝縮されているので、ぜひ立ち止まって、細かな部分までじっくり見ていただきたいです。
基本展示室1:精巧すぎるジオラマがスゴイ
まずは、「基本展示室1」に入室。中央にある大きな円盤の上で、約5分間のアニメーションが上映されています。「朝日遺跡とは何なのか」「ここに暮らす当時の弥生人たちはどんな暮らしをしていたのか」がわかるストーリーになっており、実はジオラマのストーリーにもリンクしているので、ここはぜひ最初に見ておきたいですね。
次に、奥に広がるジオラマをくまなく見ていきます。
朝日遺跡の大きさや地形、集落の様子がわかります。なんとあの佐賀県吉野ヶ里(よしのがり)遺跡にも匹敵する巨大な集落で、最盛期にはおよそ1000人が暮らしていたのではないかと推測されているそうです。
集落の真ん中には、大きな、環濠(堀)があり、この、環濠(堀)をはさんで北と南に人が生活する場所がありました。よく見ると、小高い丘になっている方には、ぐるりと防御柵がまわっていますね。これは朝日遺跡で見つかった世紀の大発見のひとつですが、この時代にはもうすでに有力者の存在や、よその集落との争乱が起きていたことがわかったのです。
▼左:手作りでここまで作られていたことにびっくり!防護柵のある集落の様子を再現 右:争乱の様子を再現
このように、ジオラマには発掘調査・研究によって明らかになったことをもとに、ひとりひとりの動きが非常に細やかに作りこまれています。「この人は何をしているんだろう?」と考えながら見ていくと、そのこだわりにきっと驚かされるはずですよ。
▼「この人は何をしているんだろう?」に答えてくれる解説ももあるのでぜひチェックしてください!
基本展示室2:よい状態で発掘された出土品がスゴイ
「基本展示室2」は、重要文化財になっている出土品を展示。そのほか、鍬や鋤などの農耕具や、美しい文様が刻まれた装飾品、極細の縫い針なども見ることができます。
お恥ずかしながら「弥生時代は、まだまだ遅れた文明」と勝手なイメージを抱いていましたが、道具の実物を見ると、とてもそうは思えません。用途に合わせた様々な素材を使いわけ、美しさも、精巧さも持ち合わせた道具たちからは、弥生人の高度な能力を感じさせられました。
また、こういった道具の中には、例えば中央に大きな孔の開いた「円窓付土器」のように、何に使われていたものか、いまだ解明されていないものもあります。弥生人になりきって、想像してみるのも面白いですね。
▼左から1:変化していく土器の様式 2:高度な技術で作られた銅鐸
3:現代と変わらない形の鍬や鋤など 4:先祖の遺影替わり!?木でできた木偶
キッズ考古ラボ:触って遊んで体感できる場所がスゴイ
子どもたちに大人気となるだろう体験スペース「キッズ考古ラボ」。こちらでは、弥生人の衣装(貫頭衣)を身に着けることができます。教科書に載っていたのは確か白でしたが、最近の研究では、麻を染色して着ていたことがわかっているとか。弥生時代の道具を使ってみたり、土器のパズルに挑戦したり、思い思いに弥生時代の暮らしを体験することができます。
▼朝日遺跡の特徴的な出土品、紅白の「赤彩(せきさい)土器」を模したテーブルがかわいい!
つぎに、外に出てみましょう。
体験のできる水田、高床倉庫、竪穴住居があります。それより少し離れたところには、なんと墓(方形周溝墓)も!そして、やや溝になっているところは…館内の展示を見た後なら分かるはず。そうです、朝日遺跡の、環濠(堀)の部分を模しているのですね。よく見ると、、環濠(堀)には貝がらが落ちています。つまりこれは、貝塚の成り立ちを表しているのです。
▼田んぼへの給水口は「円窓付土器」の形!
学芸員さんの並々ならぬこだわり、感じていただけましたでしょうか。
「あいち朝日遺跡ミュージアム」は、弥生文化を見て触れて楽しめる施設として、これからも数々のイベントや企画展示を行っていく予定。また、最新技術を使っての分析も進められているそうなので、世紀の発見が朝日遺跡から見つかるかもしれませんね。
ぜひじっくりと感じていただきたい注目のミュージアムです!
Spot Overview
あいち朝日遺跡ミュージアム清須市
東海地方を代表する弥生時代の遺跡「朝日遺跡」の魅力を発信する施設として、整備を進めていた「あいち朝日遺跡ミュージアム」が2020年11月22日(日)にオープンしました。
朝日遺跡は、日本最大級とされる吉野ヶ里遺跡(佐賀県)に匹敵する弥生時代の集落跡。その貴重な出土品の展示に加えて、住居や環濠の復元展示、趣向を凝らした体験コーナーがあります。
館内では、アニメ映像やジオラマなどにより、弥生時代の生活の様子を分かりやすく再現。屋外には、当時の建物や水田、環濠(かんごう)などを復元しており、弥生時代の生活を体感することができます。